遺 言
遺言は方式にしたがって作成しなければ効力がありません。
その方式は民法という法律(第967条以下)によって全部
で7つの方式が定められており、その方式はそれぞれ詳細に
定められています。
A 普通の方式
1 自筆証書
2 公正証書
3 秘密証書
B 特別の方式
1 死亡危急者の遺言
2 伝染病隔離者の遺言
3 在船者の遺言
4 船舶遭難者の遺言
次に、一番身近な遺言の方式であります「自筆証書遺言」につき検討
することにいたします。
T)自筆証書による遺言
この方式によって遺言を作成するには、遺言者が遺言書の全文
・日附及び氏名を自分自身で書き、印鑑をおせば出来上がる遺言
であります。
A 利点
1 簡単に遺言書を作成することが出来ます。
2 遺言の存在・内容を秘密に出来ます。
3 安価に遺言書を作成することが出来ます。
B 欠点
1 遺言書の滅失の危険があります。
2 他人によって偽造・改変される恐れがあります。
3 遺言書に記載する言葉によっては、遺言書が効力が
発生してから、問題が発生する恐れがあります。
4 遺言書を執行するために、家庭裁判所の検認手続き
を 必要と致します。
U) 自筆証書による遺言作成上の注意点
1 遺言書の全文・日附・氏名は必ず遺言者御本人が書いて下さい。
但し、自筆証書に添付する財産目録については、
自筆でなくてもいいですが、財産目録の各ページ
に署名・押印が必要になります。
(平成31年(西暦2019年)1月13日施行)
2 印鑑を押して下さい。
3 遺言書の中で、加除その他の変更をした時は?
その場所を指示して、これを変更した旨を付記の上、
その個所に署名し且つ、その変更場所に印を押して
下さい。そうしなければ無効になります。
出来れば、最初から遺言書を作成し直して下さい。
4 日付は遺言書においては、大切な要件ですので省略せず、
年月日まで記載して下さい。
5 遺言書に記載する言葉に注意して下さい。
特に「与える」・「やる」・「名義にする」・「譲渡する」等の言葉は
避けてください。
場合によっては税金面で不利な取り扱いがされる時があります。
6 氏名はできるだけ、戸籍上の氏名をお使いください。
氏名は遺言書の全文とてらせば、遺言者を確定できる程度のもの
であれば有効な「氏名」の記載とされています。
(大判大4・7・3民録21)。
しかし、遺言の効力発生が遺言者の死亡時であることから混乱
防止のために。
7 遺言書を作成する「紙」の種類は特に決められた用紙はありません。
8 自筆証書で作成された遺言書を執行するために、家庭裁判所の検認手続
が必要ですので、その旨を遺言書とは別の用紙に記載されますことをお勧
めいたします。
V) 遺言する上の注意点
1 遺言者は満15歳以上の方でなければなりません。
2 満15歳以上であれば無能力者であつても遺言をすることが出来ます。
3 意思能力のない方(痴呆等で)の遺言は無効となります。
(東京高裁昭52・10・13判)
4 遺言者は遺言するときに意思能力があれば良いことになつています。
(法963条)
5 複数の自筆遺言書が作成されましたとき、複数の遺言書の内容で
矛盾する箇所は一番新しく作成されました遺言書の内容が効力を
発生することになります。
W) 法務局における遺言書の保管制度について*
1 平成32年(西暦2020年)7月10日より法務局
で遺言書を保管する制度が開始されます。
2 この制度は、一般に自筆遺言は自宅等で保管されること
が多く遺言書が紛失したり、相続人によって遺言書の
破棄・隠匿・改ざん等が行われる恐れがあり、これら
によって、相続を巡る紛争が発生することがあります。
3 これらの紛争等を少しでも少なくする為に、公的機関で
ある法務局で遺言書を保管する制度であります。
4 この制度の特色
a) 遺言書の効力が発生後、家庭裁判所での遺言書の検認
手続きが不要である。
b) 相続開始後、相続人から遺言書の写しの請求・閲覧の
申請ができます。
c) 相続人の一人から「遺言書の写しの請求・閲覧」請求
がされますと、他の相続人に遺言書が保管されている旨
の通知がされます。
d)詳細は、下記ページにアクセスして下さい。
http://www.moj.go.jp/MINJI/minji03_00051.html