5.相続される遺産の種類

    

   1) 被相続人の一身に専属したものを除き、被相続人の財産に属した一切の
     権利義務を包括的に承継します。

    ア)一身に専属したものとは、
      @被相続人個人に着眼した法律関係
        I)委任者・受任者たる地位
        II)代理人たる地位

        <ご注意>
             商行為の委任による代理権は、本人の死亡によっては
             消滅しませんし、司法書士への委任による代理権も同
             様です。

        III)社団の一員たる地位又は、個人的信頼が基礎となつている時
        IV)身元保証人たる地位
        V)債務者の特別な技能(画家・作曲家等)を前提とする債務 
        VI)雇用契約上の労働者たる地位
          但し、使用者たる地位は、特別な事情がない限り承継さ
          れます。
        VII)入会権のように、共同体の一員であるという身分関係に基づ
          く権利は、その身分関係が承継されない限り相続されない。


    イ)被相続人の財産に属した一切の権利
      a)土地・建物等の不動産
       不動産上の所有権・地上権・永小作権・抵当権等の物権

      b)一般金銭債権(預金・貯金・貸金・有価証券等)
        金銭債権は分割債権であり、相続開始とともに法律上当然に分割
        され、各相続人はその相続分に応じて権利を承継します。

      c)賃借権
        内縁の配偶者等同居人の賃借権は、一旦、相続人に帰属した上で
        、相続人が取得した借家権を援用して、居住の継続ができる。

      d)損害賠償請求権
        生命侵害による慰謝料請求権を含みます。

      e)被相続人が不動産等を占有していた占有権

    ウ)被相続人の財産に属した一切の義務
      a)金銭債務
        金銭債務(可分債務)は、遺産分割をすることなく、その相続分
        に応じて各相続人が承継します。

      b)保証債務
       I)通常の保証債務

       II)建物の賃貸借契約よる保証債務

       III)継続的取引(根保証等)からくる責任限度額・保証期間のない保
       
   証契約の場合は相続いたしません。

       IV)身元保証契約による保証債務は相続いたしません。

      c)被相続人の契約・その他の財産法上の地位
       I)被相続人が負担していた売主としての担保責任

       II)被相続人が契約の申込を受けた者の地位

       III)被相続人が契約上、悪意(ある事実を知っていたこと)であつた
         ことから生じる効果

     
    例えば、ある人(A)が他人(B)から詐欺して不動産を買取り、
            その不動産を被相続人がAから買取りした時。

        a)被相続人が、その買取した不動産は、AがBを騙して買取した
         不動産であることを知らない時は、
            その不動産は、被相続人の所有になります。

        b)被相続人が、その事実を知っていた時。
          例え、相続人がその不動産を承継していたときでも、
            Bより返還請求を受けることになります。

                                               
      エ)相続財産でない権利
      @生命保険金請求権
       I)保険契約で受取人を「特定人」が指定している時
         受取人は、生命保険請求権を固有の権利として取得します。

       II)保険契約で受取人を単に「相続人」としている時
         判例は、保険契約者の相続人である個人を表示したものとし、
         相続財産にふくまれないとしています。
                         (最判昭和40年2月2日)

      A死亡退職金
        I)受給者が法律等で定まっているケースと定まっていないケースが
        
   ありますが、法律等で定まっているケースの場合、
          判例は、その者固有の権利であり、相続財産に含まれないとし
          います。

        II)受給者が法律等で定まっていないケースの時。
          死亡退職金は相続財産とするのではなく、生計を共していた遺族
          固有の権利とみる見解が有利です。

      B遺族年金
          遺族年金は、受給権者の最低の生活保障という趣旨から、受給権
          者の固有の権利であり、相続財産に含まれません。

      C系譜・祭具及び墳墓の所有権
        I)祖先の祭祀を主宰すべき者が承継します。
        II)主宰すべき者は、被相続人の指定した者

        III)被相続人が指定しなかったときは慣習によります。

   2) 相続人が数人いるときは、遺産は共同で承継され、遺産をそれぞれの相続分
     に応じて分割しなければなりません。