8.遺 言 

 
    1) 遺言とは、遺言者の死亡とともに一定の効果を発生させることを
      目的とする相手方のない単独行為。
     
    2) 遺言でなしえる事項

     ア)相続に関する事項
       @ 相続人の廃除又は廃除の取消
       A 相続分の指定又は指定の委託
       B 特別受益者の相続分の指定
       C 遺産分割方法の指定又は指定の委託
       D 分割の禁止
       E 共同相続人間の担保責任の指定
       F 遺留分減殺方法の指定

     イ)相続以外の遺産の処分に関する事項
       @ 遺贈
       A 寄付行為(財団法人設立)

     ウ)身分上の事項
       @ 認知
       A 未成年後見人の指定
       B 未成年後見監督人の指定
       C 遺言執行者の指定又は指定の委託

    3) 満15歳以上の者でなければ、遺言をすることができません。
       (それ以下は無効)

    4) 遺言者が錯誤によって遺言をしたときは、その遺言は無効です。

    5) 遺言者が詐欺又は強迫によって遺言をしたときは、相続人は取消す
      ことができます。

    6) 遺言者は何時でも自由に撤回することができます。


    7) 遺言は、厳格な方式が要求されます。
     ア)有効に成立した遺言の訂正・取消も所定の形式を備えないと、
       訂正・取消が無効とされ、元のままの遺言が効力を生じます。

    8) 遺言は、必ず、一人一人で作成しなければ無効となります。
                   (共同遺言の禁止)

    9) 前の遺言と後の遺言とが抵触するときは、抵触する部分の前の遺言
      は取り消されたものとなります。
        例えば、平成10年10月10日付けの遺言に
           「不動産甲を長男に相続させる」と記載されている。
        しかし、平成12年10月10日付けの遺言では、
        「不動産甲を長女に相続させる」と記載されている時は。

         不動産甲の所有権は長女が承継することになります。

        又、被相続人が生前に不動産甲を売却してしまつた時は。
         「不動産甲を長女に相続させる」という部分の遺言は取消され
          たことになります。
 

            



 
9.遺言の方式   


    1) 普通方式
      ア)自筆証書による遺言
        @遺言者が、遺言の全文・日付・氏名を自署し、印をおす方式
        A日付・氏名・印のいずれかが欠けたときは無効である。
        B日付は年月日でなくても、遺言作成日が明瞭であればよい。
            (例 満70歳の誕生日でもOK)
        C氏名は、氏・名の自署でも、本人の同一性が認識できればよい。
            (例 吉川治郎兵衛を「をや治郎兵衛」の記載でもOK)
        D自筆証書の加除・変更の方法
           遺言者が、その場所を指示し、これを変更した旨を付記して
           特にこれに署名し、
            且つ、その変更の場所に印をおします。


      イ)秘密証書による遺言
        @遺言の存在は明確にしたいが、その内容を生前中は秘密にしたい時
        A遺言者が遺言書を作成し、その証書に署名し押印する。
        B遺言者が証書に用いた印鑑で封印する。
        C遺言者が公証人と証人2人の面前に封書を提出し、それが自分の
         遺言書である旨、それを書いた者の氏名・住所をのべること。
        D公証人が、その証書を提出日及び遺言者の申述を封書に記載の上、
         遺言者・証人・公証人が署名・押印する。

      ウ)公正証書による遺言
        
 詳細は最寄りの公証人役場でお尋ねください。

    2) 特別方式 
      ア)危急時遺言
        @ 死亡の危急に迫った場合(臨終遺言)
        A 遭難船舶上の臨終遺言

      イ)隔絶地遺言
        @ 伝染病隔離者の遺言
        A 在船者の遺言

  
 <ご注意> 特別方式の遺言は、遺言者がその特別の事情が止んだ時から
         6か月生存すると効力がなくなります。